まず、はじめに「賃貸の申し込みをキャンセルすることは出来るか?」という点で言えば、キャンセルはもちろん可能です。
しかし、申し込みから時間が経過するにつれて、キャンセルの可否の判断は仲介業者によって変わります。
というのも、賃貸の申し込みと契約は「区切りが曖昧」だからです。
明確な区切りがない理由は後ほど解説しますが、ただ賃貸住宅の場合は「違約金が発生しても金額が大きくないから裁判になることが少ないだけ」で、実際はトラブルになることは多々あります。
そのため「賃貸の申し込みや審査後などの各場面でキャンセルするとどうなるのか?」は知っておいた方が安心なので、ぜひ最期までお付き合い下さい。
賃貸のキャンセルは「申し込み」と「契約」で全然違う!
賃貸のキャンセルは「申し込みなのか?契約なのか?」で、ペナルティーが発生するかどうか変わってきます。
ここは基本として抑えておきたいので、じっくり読んでいきましょう。
賃貸の申し込みとは何なのか?
賃貸の申し込みとは「入居審査の申し込み」です。
賃貸物件のオーナーは誰でも良いから部屋を貸すわけではありません。
- 家賃の支払いは大丈夫か?
- 入居後にトラブルは起こさないか?
などの事前審査を行なって、問題が無ければ契約に移るわけですが、賃貸では「契約前のキャンセルに違約金などの罰則はない」ので、申し込み段階であればノーペナルティーです。
賃貸の契約が曖昧になる理由とは?
続いて賃貸の契約ですが、こちらは契約後にキャンセルすると違約金が発生します。
ただ、冒頭でお伝えしたとおり賃貸の契約は実務的にも「どこで契約とみなすか?」が非常に曖昧で、仲介業者によって判断が変わります。
その理由は、建物賃貸借契約は「諾成契約」で当事者双方の合意があれば契約書がなくても契約は成立するからです。
諾成契約(だくせいけいやく)とは?
一般的に契約のイメージは「契約書があって成立する」と思われがちですが、じつは以下のように契約成立にはパターンがあります。
そのうち諾成契約とは「書類や目的物の引き渡しを要件とせず、当事者の合意で成立する契約」のことをいいます。
契約の種類 | 要件 | 具体例 |
諾成契約 | 当事者の合意で契約 | 建物賃貸借契約 |
要式契約 | 当事者の合意に加えて、書類作成が契約成立に必要 | 保証契約・定期建物賃貸借契約・取壊予定建物賃貸借契約・終身建物賃貸借契約 |
要物契約 | 当事者の合意に加えて、目的物の引き渡しが契約成立に必要 | 使用賃貸借 |
また、賃貸住宅の契約では「借主と貸主が同席して契約することは無い」ので、契約書が完成するまで時間が掛かります。
そのため、賃貸借契約書が当事者に渡されるよりも「借主が入居する方が先」ということもあるため、トラブルになると契約締結の線引きが難しくなるのです。
どこからどこまでが「申し込み」で「契約」なのか?
賃貸のキャンセルがセーフかアウトかは「申し込み」か「契約」なのかで判断が変わります。
この点について審査申し込みから鍵渡しまでの一連の流れを考えると、以下のような段階ごとに分けることができます。
- 入居審査の申し込み
- 審査の結果が出た後
- 重要事項説明が行なわれる
- 賃貸借契約書に借主が署名捺印をする
- 賃貸借契約書に当事者双方の署名捺印がされる
- 鍵が渡される
順番に確認していきましょう。
入居審査の申し込み
入居審査を行なって結果が出るまでの間は、当然にキャンセル可能です。
審査申込時には「申し込み金」を支払うこともありますが、そちらも返金されます。
また、返金しない場合は「宅建業法違反」になります。
審査の結果が出た後
じつは、この段階から早くも仲介業者によって判断が異なります。
というのも、先ほどお伝えしたように通常の建物賃貸借契約は「諾成契約」なので、借主は部屋に住みたいから審査申し込みをしたわけだから、貸主は審査OKした時点で双方の合意があったと考えるわけです。
しかし、個人的には「借主は審査申し込みをしただけ」であって、審査申し込み=契約の合意とするのは少し強引過ぎると思います。
重要事項説明が行なわれる
宅建業者は契約締結前に物件の説明を借主に行なう義務があり、それを「重要事項説明」といいます。
仲介業者の中には「重要事項説明をして署名捺印を頂いたということは借りるという意思表示だ」として、キャンセルを受け付けないところもあります。
しかし、重要事項説明の署名捺印は「重要事項説明を受けました」という確認のための署名捺印なので、それで契約成立というのもやはり強引だと感じます。
ただし、法律的には「合意」と認められれば契約は成立する!
賃貸借契約を規制する法律は「民法」で、さらに建物利用に関する賃貸借契約では「借地借家法」も適用されます。
この2つの法律で建物賃貸借は「諾成契約」とされているので、契約書がなくても合意が認められれば契約は成立します。
また、仲介業者が作成する賃貸借契約書(37条書面)は、重要事項説明同様に「宅建業者の義務」なのであって、民法および借地借家法から考えると必須ではありません。
ですが、それでも実務上「契約の証拠」として契約書は必要不可欠です。
賃貸借契約書に借主が署名捺印をする
ここから契約書の登場ですが、先にお伝えした通り「賃貸契約では借主と貸主が契約書作成に同席することは無い」という特徴があります。
そのため「貸主の署名捺印が揃う」にはタイムラグが発生しますし、また貸主が個人オーナーで遠方に住んでいると時間はさらに掛かります。
申し込み金が手付金になると何が変わる?
不動産契約では、手付金は「解約手付け」として扱われます。
そのため、借主が契約を解除すると手付金を放棄することになり、申し込み金と違って手付金は返還されません。
また、手付金には家賃1ヶ月分を支払うことが一般的です。
賃貸借契約書に当事者双方の署名捺印がされる
契約書に当事者双方の署名捺印があれば、当然「契約成立」と考えられます。
「でも、さっきの手付金を放棄したらいいんでしょう?」というと、そう簡単な問題でもありません。
なぜなら、契約が完了している以上「貸主は入居に向けた準備」を行なっているからです。
例えば、貸主が引き渡し向けて修繕やルームクリーニングを行なっており、この段階でキャンセルをすれば相手方に損害を与えたという意味で「損害賠償責任が発生する」と考えられます。
実際は損害賠償金を請求せずに「キャンセル不可」にして、契約内容に沿って退去手続きを踏むことがほとんどです。
仮に退去は2ヶ月前に連絡するという内容であれば「2ヶ月分の家賃は発生する」ことになります。
ですが、それでも裁判の労力と費用(かなりの確率で勝てないと思われる)を考えれば、普通に退去した方が負担は少ないでしょう。
鍵が渡される
実際に鍵を受け取って入居すれば「契約は完了した」と考えると思います。
しかし、なかには「まだ契約書が届いていない」ということで契約のキャンセルを求める強者がいます。
もちろん常識的に考えてキャンセルは出来ませんし、逆にこれが認められれば「急いで入居したいという方の要望は一切認められない」ということになるので、仮に裁判になって判例が出来たら大変なことになるでしょう。
入居審査の申し込みから段階ごとに見てきましたが、一般的には「借主が契約書に署名捺印した」時点で契約成立と判断することが多いんだそうです。
ただ、契約書作成前の申し込み審査後でも「当事者が合意している」と判断されれば契約は成立となります。
この点は契約当事者が同席しない賃貸住宅ならではの「独特なところ」だと思います。
まとめ
今回は賃貸のキャンセルについてお伝えしてきましたが、まず基本的に賃貸は「申し込みと契約は違う」ことを理解しなければいけません。
- 賃貸は「申し込み」であればペナルティー無しでキャンセルできる
- ただし、申し込みと契約のラインが曖昧なところがある
- 契約書に署名捺印した後のキャンセルはトラブルになる可能性が大きい
とくに申し込みの審査が完了してからキャンセルを伝えると「あれこれ言われる」可能性が徐々に増していきます。
ペナルティーもあれこれ言われるのも気分の良いものではありませんから、申し込み後のキャンセルは少しでも早く伝えるようにして下さい。
というか、キャンセルしないのが一番ですけどね!
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