不動産賃貸借に関わる法律には「民法」と「借地借家法」の2つがあります。
私たちが賃貸でアパートやマンションを借りる時は借地借家法が適用されますが、月極駐車場(青空駐車)では民法が適用されます。
今回は賃貸借でも民法が適用される契約に注目していきますが、内容としては以下の3つが重要です。
- 賃貸借契約
- 使用貸借契約
- 一時使用建物賃貸借契約
似たような字面で区別が大変そうですが、私たちの生活場面をイメージしながら読めばそう難しいものではありません。
というわけで、今回は民法が適用される賃貸借契約について分かりやすく解説していきましょう。
民法と借地借家法の関係について
まず民法が適用される賃貸借契約の解説の前に「民法と借地借家法の関係性」をお伝えしておきます。
賃貸借契約は種類がたくさんあり字面も似ていて、また民法と借地借家法と2つの法律があるので「区別するのが大変」です。
そのため、関係性をイメージすることは後で解説する使用貸借などを理解するためにも重要です。
上図のように借地借家法は民法の中の特別ルールで、基本は民法上の賃貸借が適用されます。
そして、借地借家法は「建物を借りる人を保護する目的」で創設されていますので、以下のケースで適用されます。
- 建物の賃貸借(一時使用を除く)
- 建物所有を目的とする地上権または土地の賃借権
ですから、建物利用が目的では無い「月極駐車場(青空駐車)や資材置き場」の場合は民法が適用されることになります。
この点を踏まえて民法での賃貸借についてみていきましょう。
民法が適用される賃貸借契約について
民法の賃貸借契約は不動産に限りません。
例えば、レンタカーやレンタルDVDなど「賃料を支払って物を借りる契約」は賃貸借契約にあたります。
民法上、賃貸借契約の期間については、次のように扱われています。
賃貸借契約の「期間」の注意点!
賃貸借契約の期間は「期間を定める場合」と「期間を定めない場合」があります。
契約期間を定める場合は、最短期間に制限はなく、また最長期間は20年を越えることは出来ませんでした。
しかし、2020年の民法改正で最長期間は50年に変更されます。
賃貸借契約の「終了」は土地と建物で違う
期間を定めている場合は、基本ルールとして期間満了によって終了します。
また、中途解約は原則出来ないため、実務上は中途解約を認める特約を設けることが一般的です。
期間を定めない場合は、当事者はいつでも解約申し入れは可能です。
土地については「1年」建物については「3ヶ月」が解約申し入れから経過にすることで契約は終了します。
賃貸借契約の「更新」には黙示の自動更新もある!?
更新については「当事者の明確な合意」があれば可能ですが、注意したいのは「黙示の自動更新がある」という点です。
黙示による自動更新とは、期間満了後も借主が使用収益を続けているのに「そのことを貸主が知りながら異議を述べない」場合は、賃貸借契約が更新されたと推定されます。
また、この場合の更新は「期間の定めのない」ものになります。
まずは基本となる賃貸借契約ですが、ポイントとしては以下になります。
- 賃料が発生する
- 民法改正で最長契約期間は20年→50年になる
賃貸でアパートなどを契約する際は「借地借家法」が適用されるので、ここでは基本として理解しておきましょう。
むしろ民法では、次の使用貸借が重要といえます。
無償がポイント!使用賃借契約とは?
賃貸借契約は有償で借りる契約でしたが、賃料などの対価の支払い無く「無償で借りる契約」のことを使用貸借契約といいます。
使用貸借は無償で契約することから、借主の立場は賃貸借に比べて非常に弱いものになっています。
また、従来の民法では使用貸借契約の成立には「対象物の引き渡し」が条件でしたが(要式契約)、2020年の民法改正からは「当事者間の合意」で契約が成立します。(諾成契約)
そのため、新民法からは目的物を受け取る前に使用貸借契約を解除することが可能となりました。(ただし、書面による使用貸借契約はこの限りではありません)
使用貸借契約の終了について
まず、使用貸借契約でも賃貸借同様に「期間を定める場合」と「期間を定めない場合」があります。
返還時期を定めた場合は、当然その期間到来までに借用物を返還しなければなりません。
返還時期を定めなかった場合には、
- 定めた目的が終わった時に、借主は返還する
- 使用するのに十分な期間が経過した時に、貸主は返還を請求できる
- 返還時期も使用収益の目的も定めなかった場合は、貸主はいつでも返還を請求できる
ことになっています。
また、賃貸借契約だと貸主からの返還請求(契約解除)には正当事由が必要ですが、使用貸借契約の場合は「正当事由は不要」です。
借主が死亡したらどうなる?
賃貸借契約の場合は、借主が死亡しても「相続人がその地位を承継する」ので契約は終了しません。
しかし、使用貸借契約では借主の死亡によって契約は終了します。
使用貸借の対抗要件とは?
対抗要件とは、自分の地位(この場合は借主)を第三者に主張するための法律要件です。
賃貸借契約では「賃借権の登記」や「建物の引き渡し」がこれにあたります。
しかし、使用貸借では対抗要件がないため「貸主が物件を第三者に譲渡する」と借主は物件を明け渡すしかありません。
原状回復や費用負担はどうなる?
賃貸借契約の場合、借主には原状回復の義務があります。(新民法 第621条)
しかし、無償の使用貸借契約の場合「通常損耗や経年変化の回復は契約の趣旨や内容によって決まる」と考えられており、貸主と借主のどちらが負担するかは契約の趣旨や内容によって異なります。
この点は使用貸借の方が良さそうに感じますが、使用貸借契約の場合は「必要費」は借主の負担となります。
必要費とは、例えば雨漏りの修繕など居住する上で必要な費用のことです。
賃貸借契約の場合、この必要費は貸主負担となり、また借主が支払っていた場合は貸主に直ちに請求することができます。
このように使用貸借は「無償」なので、賃貸借に比べて借主の立場はかなり弱くなります。
とはいえ、内容的には「無料なんだから当たり前じゃない?」という感じですよね。
使用貸借 | 賃貸借 | |
賃料 | 払わない | 払う |
相続(借主) | 相続しない | 相続する |
対抗要件 | なし | 賃借権の登記・物件の引き渡し |
必要費の負担 | 借主 | 貸主 |
でも比較するポイントが多いと「アレってどうだっけ?」となりやすいので、表にまとめておきました。
一時使用建物賃貸借契約とは?
民法が適用される賃貸借のラストは「一時使用建物賃貸借」です。
こちらは有償で建物を利用するにも関わらず、借地借家法の規定は適用されません。
また、契約期間は何年未満と定めなければならないルールもなく、契約期間の満了時に法定更新されることもありません。
こうなると他の建物賃貸借契約よりも優遇されている感じもしますが、一時使用のための建物賃貸借であることが明らかでなければいけません。
具体的には「自宅の建て替えが完了するまでの仮住まい」というようなケースは一時使用として認められます。
でも、一時使用建物賃貸借は更新出来ない(期間満了で契約は終了する)ので、工期が延びた場合について考えて契約する必要はあります。
まとめ
不動産の賃貸借契約に関わる法律には「民法」と「借地借家法」の2つがあります。
今回は「民法」が適用される契約をお伝えしてきましたが、おさらいでポイントをまとます。
- 駐車場や資材置き場など「建物利用がない場合」の賃貸借契約には民法が適用される
- 無償で契約する場合は「使用貸借」になる
- 一時使用建物賃貸借は、一時使用の目的が明確でなければならない
民法の賃貸借はレンタカーやレンタルDVDなど日常でも適用されます。
私たちが居住用のアパートやマンションを契約する場合は「借地借家法」が適用されますが、民法も覚えておいて損は無さそうですね。
※ 借地借家法が適用される賃貸借契約は、こちらの記事で詳しく解説しています。
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