先日、仲の良い大家さんと会った時に「成年後見人制度」の話題になりました。
成年後見人制度とは「精神上の障害(認知症など)により価値判断が不十分となった方が不利益を被らないように裁判所が後見人(=保護者)をつける制度」のことを言います。
成年後見人制度を利用した方が良いのは、例えば「おじいちゃんが何度も必要のないリフォーム工事を発注する」というようなケース。
このような場合に成年後見人制度を利用しておけば「契約の取消し」を行うことが出来ます。
ただ、実際のところ成年後見人制度もトラブルが多く「制度を利用するかどうかは慎重に考える」必要があります。
では、成年後見人制度にはどのようなデメリットがあるのでしょうか?
具体的にみていきましょう!
※ 成年被後見人になるのは認知症の方だけではありませんが、このブログは「不動産に関する内容がメイン」になっています。
なので、以下「不動産などの財産を持っている方」というイメージでご覧下さい。
成年後見人制度のデメリット!
成年後見人制度のメリットでありデメリットにもなるのが「財産を管理する権利を譲渡する」という点です。
財産を管理して貰うことで「悪い人に不利な契約をされる」ようなことから守られるメリットがありますが、財産を管理するはずの「後見人(家族)が横領する」ことが問題になっています。
そのため成年後見人制度では「第3者の弁護士や司法書士を裁判所が後見人に指定する」のですが、その場合は弁護士や司法書士(専門職後見人)への報酬支払いが発生します。
ようするに流れとして、
- 意思能力に欠ける方を守るための制度を作ろう
- 家族が後見人になっていたら横領が問題になった
- じゃあ第3者の専門職の方を後見人にしよう(もしくは「後見制度支援信託」を利用する)
- 報酬の支払いも大変だし財産管理が厳しくて納得いかない
そんな感じになっています。
「じゃあ、自分で後見人を決めることはできないの?」というと、それも可能です。
将来判断能力が衰えた時に備えて後見人を決めておく「任意後見人制度」があります。
任意後見人制度とは?
任意後見人制度は「自分で後見人と財産管理を決められる」ので良さそうな制度ですが、実際の所あまり広まっていません。
その理由として私が思うのは、まず任意後見人には「取消権がない」ということ。
成年後見人制度のメリットは「取消権がある」ことだと思うのですが、騙されて契約しても取り消しが出来ないのは正直不安です。
また任意後見人制度では、任意後見人を監督する「任意後見監督人」が家庭裁判所から選ばれます。
そして、この任意後見監督人には裁判所が定める報酬を支払うことになります。
任意後見人が家族であれば無報酬かもしれませんが、第3者であれば任意後見人と任意後見監督人に報酬を支払うことになるので大変ですよね。
では「成年後見人制度は必ず受けないといけないのか?」というと、じつはそうではありません。
必要であれば利用しなければいけませんが、必要でなければ別にやらなくてもいいのです。
では、成年後見人制度を利用しなければいけない時は「一体どのような場合」なのでしょうか?
成年後見人制度を利用しなければいけないケースとは?
ここで冒頭の大家さんと「なぜ成年後見人制度の話になったのか?」をようやくお伝えできます。
なんとなく「嫌なら成年後見人制度やらなきゃいいじゃん」と思いそうなんですが、不動産などの財産を持っている方は「認知症になった場合を考えておかないと大変なこと」になります。
というのも、認知症になると
- 預金口座からお金が下ろせない
- 不動産が売れなくなる
という状況に陥るからです。
認知症になると実質的に財産が凍結する!?
認知症と認められる(=意思能力がない)と、銀行は詐欺などの犯罪を防ぐために口座を凍結させます。
仮に家族が本人の生活費などのためにお金を下ろすとしてもダメです。
また、不動産に関しても本人の意思が確認出来ない場合は売却はできませんし、また賃貸借契約も結べません。
これアパートの大家さんだと大変なことです。
こうなった場合は成年後見人制度を利用することで、大家さんの生活費を口座から出せるようになったり、アパートの維持なども可能になります。
相続人に意思能力がない場合も後見人が必要?
通常の相続では「遺産分割協議」で相続税などが最も掛からない有利な方法を選択します。
その際に認知症などで「意思能力のない相続人」がいる場合には、遺産分割をすることができません。(遺産相続は相続人全員で協議しないといけないからです)
遺産分割協議が出来ないと「法定相続分で申告する」ことになりますが、
- 金融機関の相続手続きがスムーズに行われない
- 不動産の名義が相続人の共有になる
という問題があるので、遺産分割を行うために「成年後見人」を指定することになります。
しかし、成年後見人制度を利用すると「相続のために成年被後見人になった方の財産管理が必要になる」ので、今度はそれが大変になります。
こうなってくると成年後見人制度の趣旨と違ってきますけどね。
「認知症と判断された」時点で制度を利用するしかない!
ようするに認知症と判断されたら財産が実質凍結されるので、それを最低限使えるようにするには「成年後見人制度を利用する」しかなくなります。
そうなると財産の利用を制限されるので「生前贈与などの相続税対策」も出来ません。
では、元気なウチなら何か出来ることがあるのでしょうか?
信用できる家族がいるなら「家族信託」という手もある!
認知症になる前であれば「家族信託」という方法もあります。
家族信託とは、財産を家族に託して管理や処分(売却など)を任せる手続きです。
行うこととしては、
- 信託契約書の作成
- 信託不動産の登記
- 信託口座の開設
などがあります。
家族信託を行っておくと本人が成年被後見人になっても財産が凍結されません。
さらに、相続の時に意思能力のない方がいることが分かっているのであれば、それを踏まえて財産を継がせることが出来る上に、引き続き信託の範囲で受託者が意思能力のない方をサポートすることが出来ます。
成年被後見人になる前の手段として「家族信託」を考えるのはアリだと思います。
他にも「生前贈与」や相続のことを考えると「思い切って不動産などは売却して現金化しておく」のも手だと思います。
その点は元気なウチに税理士など専門の方と相談しながら進めましょう。
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おわりに
今回は「成年後見人制度のデメリットについて」お伝えしてきました。
例えば、成年後見人制度も家族が遠くに住んでいたりして「半ば強制的に財産を管理して貰った方が良い」というケースもあるでしょう。
でも、急に成年後見人制度を利用すると、
- 財産を自由に使えない(そのための制度でもあるわけですが)
- 報酬支払いが発生する
など、個人的にはデメリットの方が大きいのかなと思います。
また、認知症など意思能力がないと判断された”後”であれば「成年後見人制度を利用する」しかなくなります。
ですが、元気のうちであれば「家族信託」など、他にも打つ手はあること知っておいて下さい。
以上「成年後見人制度はデメリットだらけ?でも利用せざるを得ない理由とは!」でした。
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