突然ですが「床下エアコン」というのをご存知でしょうか?
エアコンと言えば通常は天井近くに設けますが、それだと冬場の暖房時は暖気が天井近くに溜まってしまい、部屋全体はなかなか温まらないですよね。
そこでサーキュレーターやシーリングファンを使い、暖気を床まで持ってくることも可能ですが、同時に風が発生するのでどうしても寒さも感じてしまいます。
「それなら床暖房がいいんじゃない?」と思われるかもしれませんが、床暖房は床に接する生活をしてこそ威力を発揮するもの。
部屋全体を温めるわけではありませんし、床暖房が敷かれていない部分は当然冷たい状態です。
そこで、今注目されている暖房システムが「床下エアコン」なんです。
では、そんな評判の床下エアコンですが具体的にどういったメリットやデメリットがあるのでしょうか?
私が建築のことを色々と教えてもらう一級建築士の方は「床下エアコンはメリットだらけ」と絶賛なんですが、まずは今回あえて「床下エアコンにデメリットは無いのか?」という視点から切り込んでみたいと思います。
床下エアコンにもデメリットってあるの?
まず「床下エアコンが何なのか?」というところから考えたいと思います。
床下エアコンを「エアコン」と考えると明確なデメリットがあります。
それは「冷房」が使えないことです。
床下エアコンは「冷房」として考えるべからず!
使えないというと語弊がありますが(冷房は出ますから)、床下を冷やしたところで冷房としての効果は見込めません。
床下が冷えるだけですからね、
むしろ床下に湿気が溜まりそうなので使わない方が賢明だと思われます。
しかし、床下エアコンを「暖房器具」と考えるとどうでしょうか?
同じ床から暖める「床暖房」も、設備導入のコストはもの凄く高いですが活躍するのは冬だけです。
そう考えると「エアコンなのに暖房しか使えないじゃないか!」というのは、エアコンとして考えるとデメリットのように感じますが、暖房器具と割り切れば大きなデメリットではないと思います。
知人の一級建築士が言うように「床下エアコン」を暖房器具として考えるなら、詳しく後述していきますがメリットだらけなんです。
じゃあ「メリットだらけと言うからには根拠があるんでしょうね」という声も聞こえてきそうなので、まずは「お金の面」について解説していきます。
床下エアコンを設置する費用はどれくらい?
「床下エアコン」と言うからには、エアコン本体を床下に設置する必要があります。
エアコン自体は一般的な壁掛け型で問題ないという方もみえますが、私は「床置き型エアコン」をお勧めします。
価格で言えば壁掛け型よりも高いのですが、それなりにメリットがあるんです。
床下エアコンの機種は「床置き型」をお勧めします!
(画像をクリックするとアマゾンに移動します)
14畳の壁掛けエアコンであれば10万円を切るくらいで販売されていますが、こちらの床置き型エアコンは18万円台なので2倍以上のお値段となります。
そう考えると高いのですが「メンテナンスを考える」と圧倒的に床置き型の方が楽です。
壁掛け型だと「自動お掃除機能」があるから大丈夫という方もみえますが、自動お掃除機能は掃除しなくて良いというわけではありません。
結局「掃除は必要」です。
そうなると壁掛けは「エアコンの下からフィルターを取り出したりする」ので、それが床下に設置されているということを考えるとメンテナンスの大変さが簡単に想像できると思います。
ですから、長く使うことを考えれば高くても「床置き型エアコン」がお勧めなんです。
床置き型エアコンの設置について
床置き型エアコンの設置ですが、まず平面的にエアコンを床置きできるスペースを確保する必要があります。
その床にエアコンサイズの穴を開け、エアコン本体を半分床上、半分床下になるような位置に設けます。
これは「エアコンの吸気は床上から行い、吹き出しは床下から行える位置に設置する」ということです。
しかし、そうなると床から「ぽこっとエアコン本体の頭が床から飛び出している」ような状況でインテリア的に問題ありですよね。
そのため、床下エアコンを設置する場合はそのエアコンに家具のようなカバーを付けます。
お写真をお借りしましたが、上記のように上手く作り込めば見た目はベンチのような感じにすることも可能です。
見た目もスッキリして綺麗に仕上がっています。
建築士さんのセンスが光っていますね。
床下エアコンは「二重床」と「基礎の断熱処理」が必須!
床下エアコンと言っても、エアコンを床に置くだけでは効果はありません。
効果的な床下エアコンを設置するには、まずは床を二重にする必要があります。
その床下部分にエアコンの空気を送り込み、床に設けた吹き出し口からエアコンの空気を出すのが床下エアコンのシステムです。
一戸建てならもともと基礎の上に床があるので、既に二重床。
基礎の形態にもよりますが、そこを上手く利用すればすぐに床下エアコンの導入は比較的行いやすいです。
ただし、注意しなければならないのは基本的に基礎は断熱をしていません。
床自体は断熱処理をしていますが、基礎に断熱処理を施しておかないと「床下にエアコンの空気を送っても基礎から熱が逃げて」しまいます。
そのため、床下エアコンは二重床の他に基礎の断熱も必要になります。
吹き出し口が自由な床下エアコン!窓なし部屋でもエアコン効果あり!
エアコンは基本的に外壁に面する場所にしか設置できません。
しかし、床下エアコンなら外壁に面しない窓がない部屋でも「床下から暖気が広まるので」廊下でもキッチンでも温めることができます。
また、床に吹き出し口さえ設ければ、窓のない部屋でも床下エアコンからの空気を送り込むことができます。
先ほどのエアコンを綺麗に隠されていた会社の画像を再度お借りました。
無垢のフローリングにガラリ(吹き出し口)がピシッと造らていて仕事の丁寧さが伺えますよね。
こういったガラリを作ることで、床下からの温風がリビングだけではなくキッチンや脱衣所にも流れ込んできます。
つまり、エアコンの台数も部屋の数だけ必要とうわけでもなく、床下エアコンは初期投資も意外と抑えられます。
ちなみに、床から空気を吹き出すと埃が舞いそうなイメージがあるかもしれませんが、実際の吹き出し口からは暖気は出るものの風はほとんど感じられません。
むしろ通常の壁掛け型のエアコンの方が埃やチリは舞いますので、じつは床下エアコンは健康的でもあるんです。
床下エアコンの設置費用は40万円程度か!?
床下エアコンを設置する際には、以上のように
- エアコン本体(床置き型を推奨)
- 二重床と基礎断熱の工事
- ガラリの設置
などが必要となります。
家の大きさなどによって基礎断熱の工事費用など変わってきますし、施工される会社によると思いますが、
- エアコン本体および取り付け工事費…25万円
- 二重床と基礎断熱の工事…10万円
- ガラリの設置…5か所で5万円
おおよそ40万円程度で設置が可能です。
インテリア部分などをプラスα10万円と考えても50万円です。
床暖房を15畳のリビングに設置する費用が「70万円から100万円くらい掛かる」ことを思うと、1階床全面暖房で40万円前後であればイニシャルコストはかなりの節約が期待できます。
しかし、いくら設置費用が安くても「ランニングコストが高ければ意味が無い」ですよね。
というわけで、次は床下エアコンの電気代についてみていきましょう。
一番気になる!床下エアコンの電気代について
エアコンと聞くと「電気代ってお高いんでしょ?」と思うのは私だけではないと思います。
では、まず同じ床を暖める暖房器具の「床暖房」の月々のコストをみていきましょう。
床暖房のランニングコストは?
床暖房には「温水式」と「電気式」があります。
一般的にリビングなどで使用するのは温水式が主流ですが、こちらには「ガス式」「ヒートポンプ式」があるので3種類で見ていきましょう。
10畳 | 12畳 | 16畳 | |
温水式(ガス) | 4,700円 | 5,600円 | 7,500円 |
温水式(ヒートポンプ) | 3,900円 | 4,900円 | 6,500円 |
電気式 | 7,300円 | 8500円 | 11,500円 |
(床暖房を8時間使用で月々掛かるコストの概算)
月々のランニングコストだけをみるとヒートポンプが一番安いですが、設備導入の費用は一番高くなるので主流は「温水式(ガス)」です。
それでも16畳リビングで見ると月々約7,500円のガス代と電気代が掛かります。
床下エアコンのランニングコストは?
先ほどの三菱の床下エアコンですが詳細説明の欄に「年間電気代のめやす:約36740円」と記載がありました。
12か月で割ると約3,100円となりますが、たぶんそこまで暖房費が安いということはないでしょう。
基本的に床下エアコンは24時間稼働させますからね。
「24時間稼働なら電気代も凄いんじゃないの?」と思いますが、基本的にエアコンはON/OFFを繰り返す「間欠運転」より、連続運転の方が省エネになります。
また、床下エアコンなら温めたり冷やしたりするのは床下の狭い空間のみで、かつ断熱をしっかり行うことで部屋全体を温度調整するよりエネルギー効率はとても良いのです。
床下の広さを使用するエアコンにもよりますが、床下エアコンの電気代は7,000円前後が一般的です。
床暖房と比べても決して高いランニングコストではありません。
床下エアコンって寒いんじゃないの?
床下エアコンは「コストが節約できるのはわかったけど、そもそも床下暖めても部屋は寒いんじゃないの?」と思われるかもしれません。
しかし、床下エアコンは暖房としてもかなり優れているのです。
「熱放射」により部屋全体が暖められる!
床下をエアコンで暖めることで「熱放射」の効果が得られます。
熱放射のイメージとして「夏の寝苦しい夜」を想像して下さい。
「深夜になっても部屋の中が眠れないくらい暑いのに、外に出てみたら意外と涼しい」という経験ありますよね。
これは、外の気温が下がっても日中に熱せられた外壁や屋根が「熱(電磁波)を発している」ので暑くなるのです。
床下エアコンは同様に「床下を暖めて熱を放射する状態にして」部屋全体を暖めます。
あの夏の寝苦しいジワジワとくる暑さを冬に再現できるとしたら、ある意味で最高じゃないですか(笑)
また、床暖房のように「床暖房を入れているリビングだけが暖かい」わけではなく、床下から全体的に温めるのでキッチンも脱衣場も同様に暖められるのは大きなメリットだと思います。
エアコンと何が違うの?
「結局エアコンと何が違うんだよ」と思われるかもしれませんが、仮にエアコンを暖房で利用して電源を切ったら結構早く部屋の中が冷えると思います。
これは暖房で暖められた室温も「窓や床など」に触れることで熱が奪われていきます。
専門的な話になると「ニュートンの冷却の法則」や「熱伝導、熱伝達、熱放射」などの話になるので割愛しますが、
- 炭火でじっくり焼く(床下エアコン)
- バーナーで一気に焼く(壁掛けエアコン)
そんなイメージでしょうか。(例え下手で申し訳ない)
床下エアコンを採用する際の注意点!
さて、床下エアコンについて色々と解説してきましたが、最後に設置について注意点をお伝えします。
それは「リフォームでは床下エアコンの設置は難しい」という点です。
というのは、床下エアコンは基礎断熱が施工されていない場合、どれだけ床下を暖めても基礎(コンクリート)から熱がドンドン逃げてしまうため「まったく意味のないもの」になります。
しかし、基礎断熱はリフォームでの施工は実質難しく、床を全て取り外すような大工事になってしまいます。
そのため、床下エアコンを採用する場合は新築時が理想的です。
おわりに
いかがでしたか?
評判の「床下エアコン」についてでしたが、私も知人の一級建築士さんの事務所で採用した家で床下エアコンを体感させてもらいましたが最高でした。
私のように冷え性で冬は足元が厳しい人にとって床が暖かいというのは嬉しい限りです。
また、そもそも「省エネ器具のエアコンを利用する」わけですから、同じ暖房でも床暖房よりもお金の面でコストダウンできるのも助かります。
私は家を購入して数年ですから買い替えも出来ませんが、子供が家を買う時には「床下暖房いいよ」と教えてあげたいと思います。
これから家を建てる方は、ぜひ検討してみてくださいね。
以上「床下エアコンのデメリットって何?お金や効果のことも考えていくよ!」でした。
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