不動産の売却に関わる税金の1つに「譲渡所得税」があります。
所得税というと、会社から貰う給料(給与所得)から差し引かれているので聞き覚えはありますよね?
譲渡所得税は、給与ではなく「譲渡(売却や交換など)で所得が発生した」と考えると分かりやすいと思います。
そんな譲渡所得税ですが、じつは色々な「税金が安くなる特例」があります。
それは嬉しいことなのですが、ただその種類がかなり多く「自分が対象になるかどうか?」1つ1つ調べるとなると、正直心が折れますよね。
というわけで、ここでは「譲渡所得税の控除の対象か判断する2つの視点について」お伝えしていきます。
譲渡所得税の控除を分かりやすくする「2つの視点」とは?
譲渡所得税の特例を受けるためには「条件(適用要件)」があります。
その条件も細かい部分があるのですが、ほとんどの特例で「所有期間」と「どのように」譲渡したのかが絡んできます。
ですから、まずはその部分に注目した方が「自分が対象かどうかの判断」は分かりやすくなります。
まずは振り分けやすい「所有期間」からみていきましょう。
※ 各特例の細かい適用要件は割愛するので「自分の対象はこれかな?」と思ったら、国税庁のHPなどを参考にしてください。
「所有期間」で税率が変わる!?
まず譲渡所得税は、基本の税率に
- 「短期税率」…所有期間が5年以内で30.63%(復興特別所得税を含む)
- 「長期税率」…所有期間が5年以上で15.315%(復興特別所得税を含む)
の2つがあります。
そして、この税率が安くなる特例(軽減税率)として、
- 「所有期間が10年を超える」…6,000万円以下の部分が10%になる(長期譲渡所得の軽減税率)
- 「所有期間が5年を超える”優良住宅地など”」…2,000万円以下の部分が10%になる(優良住宅地の軽減税率)
があるので、まずは譲渡する不動産の所有期間が「5年以下(以上)なのか?10年を超えるのか?」で考えると分かりやすくなります。
何を「どのように」譲渡したのか?
土地や建物を譲渡したと言っても、譲渡にも色々あります。
「売却したのか?買い換えたのか?」でも、適用される特例が変わってくるのです。
また「何を」という部分も特例が適用されるかどうかの条件となりますが、ここは特例ごとで条件が変わってくるので「後回し」がお勧めです。
まずは、どのように譲渡したのか(譲渡の仕方)から考えていきましょう。
売却した場合
不動産を売却した場合は「居住用財産の3,000万円特別控除」の特例を利用できるかもしれません。
- 居住用ということなので、
- 現在も住んでいる
居住しなくなって3年経過した年の12月31日まで
である必要はありますが、適用されると「譲渡による利益から3,000万円が控除」されます。
例えば、
- 4,000万円(売却価格)-1,000万円(取得価格)=3,000万円(譲渡による利益)
という場合に「居住用財産の3,000万円の特別控除の特例」が適用されれば
- 3,000万円(譲渡による利益)-3,000万円(控除)=0円
となります。
ただ、居住用財産でも「配偶者や直系血族(父・母・子・孫)への譲渡はダメ」など、他の条件もあるので適用要件は要チェックです。
ちなみに、所有期間は問いません。
空き家を相続した場合の特例
また、この3,000万円特別控除ですが「相続した空き家を譲渡した場合」も適用されるケースがあります。
相続した空き家を、
- 地震に対する安全基準に適合するリフォームを行って譲渡する
- 空き家を取り壊して更地にして譲渡する
適用要件は他にもあるので要チェックですよ。
買い換えた場合
今の家を売って新しい家を購入する「買い換え」の場合には「買換え特例」があります。
ただ、こちらも「売る家・買う家にそれぞれ適用要件がある」ので要チェックです。
主なものとして
譲渡する資産
- 所有期間と居住期間が10年を超える
- 売却代金が1億円以下
- 居住しなくなって3年経過した年の12月31日まで
買い換える資産
- 50㎡以上の家であること
- 500㎡以下の土地であること
- 譲渡した前年の1月1日から、譲渡した翌年の12月31日までに取得すること
などがあります。
また、3,000万円(売却価格)< 5,000万円(購入価格)で、購入価格が売却価格を上回っているのであれば課税はされません。
収用された場合
収用とは「国が公共使用するために取得すること」を言います。(補償はしてくれます)
この場合の特例としては、
- 5,000万円特別控除
- 課税の繰延べ
などがあります。
課税の繰延べの特例のイメージは「買換え特例」と一緒です。
5,000万円の補償金を貰って、3,000万円で家を買ったら、差額の2,000万円にだけ課税されることになります。
損した場合
資産を売却して赤字になった場合の特例には「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」があります。
こういう「日本語なのに理解できない単語の序列」は、1つ1つ丁寧に分けて考えると分かりやすいです。
- 「譲渡損失」… 譲渡して損した場合のこと(利益が出た場合が「譲渡所得」です)
- 「損益通算」… 一定期間内の取引の利益と損失を相殺すること(取引Aの損失を取引Bの利益から差し引くということ)
- 「繰越控除」… 損益通算しても「まだ損失がある」場合、翌年から3年の各年の総所得金額から差し引けるというもの
「譲渡損失の損益通算及び繰越控除」には、
- 売却して住宅ローンが残っている場合の特例
- 居住用財産を買い換え場合の特例
があり、それぞれ適用要件があります。
ここまで「一般的な住居」をイメージして譲渡所得の特例をお伝えしてきましたが、他にも農地などの特例もあるので念のため記載しておきます。
- 「特定土地区画整理事業など」のために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例
- 「特定住宅地造成事業など」のために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例
- 「平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地」を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例
- 「農地保有の合理化など」のために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例
(本当に特例いっぱいあるでしょ?)
おわりに
今回は「譲渡所得税の控除について」お伝えしてきましたが、ざっと読んで貰っても「いろいろな特例がある」ことは分かると思います。
実際「譲渡所得税の控除」で調べると、各特例の解説が順番に解説されていることが多く「自分のケースでは対象になるのか?」を調べるだけで一苦労です。
ですから、まずはざっくり
- 所有期間(から軽減税率を調べる)
- どのように譲渡したのか?(譲渡の仕方それぞれに特例がある)
上記2つで当たりを付けておけば「とりあえずこの特例は関係ないな」と判断が付きます。
あとは、関係がありそうな特例の適用要件をしっかり調べれば「自分の頭の中もスッキリ整理」できますよ。
以上「譲渡所得税の控除!対象の判断は「2つの視点」で考えると簡単だよ」でした。
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