映画やドラマで「相続で揉める場面」を見たことがあると思います。
財産を持つAさんが亡くなって、性格の悪そうな姉Bが遺産を相続できると思っていたら、じつは「Aさんには内縁の妻Cとその息子Dがいた!」みたいなケース。
でも、相続の順位が分からないと「なんで姉Bは内縁の妻の息子Dを殺害しようとするのか?」が分かりません。
…そんなドラマの話は置いといても、私たちが長生きすれば「相続」は経験することになります。
であれば、自分は「相続出来るのか? 割合としてどれくらいなのか?」気になるところですし、知っておきたい人生の大切な知識です。
相続は難しそうな印象があるかもしれませんが、じつは遺言書がない場合「相続の順位」や「相続分」が法律で定められています。
そこを抑えれば案外簡単なので、まずは「法律で定められた相続の順位」を色々なケースも踏まえて解説していきましょう!
相続の順位!まずは基本を抑えよう
「こういったケースは?」という特別な状況は後で解説するとして、誰が相続人になるのかという基本は以下の通りです。()内は相続分の割合です。
- 配偶者(1/2)+子(1/2)
- 配偶者(2/3)+直系尊属(1/3)
- 配偶者(3/4)+兄弟姉妹(1/4)
※ 直系尊属とは「父母・祖父母・曽祖父母(曾じいちゃん)など」直接の先祖のこと。
まず、配偶者は常に相続人になります。
子供は相続の第1順位となるので、お父さんが亡くなった場合は「配偶者と子供で1/2ずつ」を相続します。
直系尊属が相続人になる場合は「第1順位となる子供がいない」場合となり、配分は「配偶者2/3」「直系尊属で1/3を等分」です。
兄弟姉妹は「子供と直系尊属がいない場合」となり、配分は「配偶者3/4」「兄弟姉妹で1/4を等分」となります。
では、この基本を踏まえて色々なケースを見ていきましょう。
必ず相続人となる「配偶者がいない」場合はどうなる?
お父さんが亡くなる前に、すでにお母さん(配偶者)が亡くなっていた場合「第2順位の直系尊属が繰り上がったりするのか?」というと、そんなことはありません。
配偶者がいない場合は「子が単独で相続する」ことになります。
遺産が6,000万円であれば「子供3人で2,000万円ずつ」ということですね。
ここまで凄く簡単だと思います。
では、こんなケースではどうなるのでしょうか?
相続人が亡くなっているけど「その子供がいる」場合は?
第1順位の子供がいないので「第2順位の直系尊属の出番か?」というと、そうではありません。
この場合は、相続人の権利を「その子供」が引き継ぎます。(これを「代襲相続」といいます)
上図では「配偶者1/2」と「子の子供2人(図だと孫)なので1/2を分ける(ひとり1/4)」ことになります。
もちろん、代襲相続は第1順位の権利を引き継ぐわけなので、
この場合は「配偶者1/2」「子供が1/2を3人で分ける(ひとり1/6)」「孫は1/6を2人で分ける(ひとり1/12)」ということになります。
ちなみに、孫もいなくて「曾孫だったらどうなるの?」というと、これも「再代襲相続(兄弟姉妹にはない)」として認められます。
こう考えると「子の相続する権利」は結構強い感じがしますよね。
では、子供も養子や胎児もあるわけですが、相続では「どこまでの子供が権利を有する」のでしょうか?
第1順位の子は、どこまで認められるの?
相続の権利を持つ子は「実子・養子・胎児・嫡出でない子供(両親が結婚しないで生まれた子)」まで幅広く認められて、また扱いも同じです。
一方、配偶者に関しては婚姻関係のない「内縁関係」では認められません。
ということは「内縁の妻には相続の権利がないけど、その間に生まれた子供には相続の権利がある」ことになります。
また、直系尊属で「父と祖父」という世代が違う場合についてもお伝えしておきましょう。
直系尊属で父と祖父がいた場合は、じつは相続人になるのは「父だけ」となります。
被相続人から見て「より近い世代」の直系尊属が相続するので、じつは祖父は相続しないのです。
ここまで見ていくと相続の順位は定められていますし、また相続の割合も決まっています。
相続は揉めると言われますが「昼ドラのようにドロドロした展開」にはならないように思えますよね?
では、なぜ相続は揉めると言われるのでしょうか?
なぜ相続は揉めると言われるのか?
「相続が揉めるのは財産が多いからでしょう?うちはそんなに財産がないから大丈夫!」
というと、やっぱりそう簡単ではないのが相続。
一体何がそこまで揉める原因になるのかというと、それは「遺産分割」が難しいからです。
相続財産は簡単に割り切れないから難しい!?
遺産も単純に「すべてが現金」であれば法定相続分で定められた割合で分配すればよいでしょう。
でも、財産の形が「土地や建物などの現金以外」だったらどうでしょうか?
仮に、配偶者と子供2人が法定相続人で、遺産が「現金3,000万円・トヨタ自動者の株式1,000万円分・実家などの土地建物」だった場合の法定相続分はどうなるかというと、
- 「配偶者」…現金1,500万円・株式500万円分・土地建物の権利を共有で1/2
- 「子供ひとり」…現金750万円・株式250万円分・土地建物の権利を共有で1/4
となります。
つまり、全部の遺産を法定相続分で割るわけです。
しかし、土地建物の権利を割るからと言って「お母さんはリビングしか使っちゃダメ!」とかは出来ませんから、皆が納得出来るように遺産を分割する必要があるわけですね。
「土地の権利はいらないからお母さんは現金2,000万円と株式を貰います」みたいな感じです。
しかし、ここで息子(相続人の子)の嫁が後ろから「私は土地なんかいらないからトヨタ自動車の株を相続して!」とか言ってきたりするので、相続は揉めるのです。
さらに、ここまでは「遺言のない」法律で定められた順位や相続分の話でした。
では、遺言書が出てきたら一体どうなるのでしょうか?
「遺産はすべて愛人Yに譲る」なんて遺言書が出てきたら、配偶者と言えども遺産は1円も貰えないのでしょうか?
そこについては、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ合わせてご覧下さい。
遺留分とは何か?当事者になったら注意すべきこともやさしく解説!
おわりに
今回は「相続の順位について」お伝えしてきました。
相続順位と相続分をおさらいすると、
- 配偶者(1/2)+子(1/2)
- 配偶者(2/3)+直系尊属(1/3)
- 配偶者(3/4)+兄弟姉妹(1/4)
となります。
また、注意したいのは「相続人が亡くなっていても子供がいる」ケースです。
その場合は「代襲相続」という制度があるので、子供が相続の権利を引き継ぐことになります。
そう考えると代襲相続は、相続の順位を調べるときに必ず知っておきたい知識ですね。
以上「相続順位を図でわかりやすく!配偶者や子供がいない場合はどうなる?」でした。
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