住まい

賃借人の義務には何がある?知らないでは済まされない4つの注意点!

賃貸で部屋を借りる人を「賃借人(ちんしゃくにん)」といいますが、皆さんは賃借人にも義務があることをご存じでしょうか?

具体的には、賃借人には次の4つの義務があります。

  • 善管注意義務(保管義務)
  • 用途遵守義務
  • 通知義務
  • 修繕受忍義務

賃借人の方には「家賃払っているんだから好きに使って良いんでしょう?」と思っている人もみえますが、上記の義務を果たさないと賃貸契約を解除されることもあるので注意が必要です。

賃貸トラブルを避けるためにも「賃借人は必ず知っておくべきポイント」なので詳しくみていきましょう!

 

 

善管注意義務とは?

聞き慣れない言葉だと思いますが、善管注意義務とは「自分の所有物より高度な管理・保存をする義務」のことをいいます。

民法 第400条

債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない

不動
賃貸物件のように「同じ物がない」場合は、持ち主に手渡すまで大切に扱わないといけないのですね。

 

善管注意義務を違反するとどうなる?

例えば、賃借人の寝たばこが原因で賃貸物件が損傷したとします。

この場合は、賃貸借契約に原状回復に関する条項がなくても「損傷前の状態に戻す責任を負う」ことになり、賃借人は損害賠償しなければなりません。

また、意外と賃貸管理をしていて多いのが「ごみ屋敷」です。

こちらも「自分の物以上に大切に扱っているとは言えません」から、善管注意義務違反を理由に損害賠償を請求されることになります。

おやつ
仮に転貸(又貸し)をしていて「転貸人の故意・過失により損傷した」としても、転貸した賃借人(原賃借人)が損害賠償責任を負います。

 

用法遵守義務とは?

用法遵守義務とは「ルールを守って使用収益する義務」のことをいいます。

民法 第594条

  1. 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない
  2. 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない
  3. 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる

例えば、次のような行為が挙げられます。

 

絶対的禁止行為

  • 鉄砲、刀剣類または爆弾性、発火性を有する危険な物品等を製造又は保管すること
  • 大型の金庫その他の重量の大きな物品等を搬入し、または備え付けること
  • 排水管を腐食させる恐れのある液体を流すこと
  • 大音量でテレビ、ステレオ等の操作、ピアノ等の演奏を行なうこと
  • 猛獣、毒蛇等の明らかに近隣に迷惑をかける動物を飼育すること
  • 本物件を反社会的勢力の事務所その他の活動の拠点に供すること
  • 本物件または本物件の周辺において、著しく粗野もしくは乱暴な言動を行ない、または異性を示すことにより、付近の住民または通行人に不安を覚えさせること
  • 本物件に反社会的勢力居住させ、または反復継続して反社会的勢力を出入りさせること
おやつ
その他にも「勝手に部屋を増改築してはならない」など色々ありますが、用途遵守義務違反にあたる行為は通常契約書に記載されています。

 

賃貸人の承諾が必要な行為

  • 階段、廊下等の共用部分に物品を置くこと
  • 階段、廊下等の共用部分に看板、ポスター等の広告物を掲示すること
  • 観賞用の小鳥、魚等であって明らかに近隣に迷惑をかける恐れのない動物以外の飼育をすること
不動
階段や廊下に物を置くと「消防法」にも違反するそうですよ。

賃貸人への通知が必要な行為

  • 新たな同居人を追加すること(出生を除く)
  • 1ヶ月以上継続して本物件を留守にすること
おやつ
この2つは知らずにやってしまう方が多いので注意して下さい。

 

用途遵守義務を違反するとどうなる?

用法遵守義務を違反して「契約当事者間の信頼関係を破壊する」に至った際には、賃貸人(貸主)は賃貸借契約を解除することができます。

とはいえ、1回の義務違反で契約解除では賃借人に厳しすぎます。

そのため賃貸借契約のように継続的な契約では「信頼関係不破壊の法理」が働くので、実務では簡単に契約解除されることはありません。

ちなみに、この信頼関係が破壊されたかどうか判断する「明確な決まりはない」ため、現時点では判例と照らし合わせて考えられています。

 

 

修繕に関する義務について

賃貸人は、賃借人が使用収益できるために雨漏りなどが発生すれば「修繕する義務」があります。

それに対応して、じつは賃借人にも次の2つの義務を負います。

 

通知義務とは?

賃貸物件を使用しているのは賃借人(入居者)なので、雨漏りや漏水など修繕を必要とする状況に合っても、大家や管理会社は入居者から連絡を貰わないと気が付けません。

そのため、賃貸物件に修繕が必要となる場合「賃借人は遅滞なくその旨を賃貸人に通知する義務」を負います。(通知義務)

もし通知義務を怠ったことが原因で「賃貸物件の損傷が拡大した」場合は、賃借人は損害賠償を請求されることがあります。

不動
ただし、賃貸人が修繕の必要があることを「すでに知っている」場合は、賃借人は通知義務を負いません。

 

修繕受忍義務とは?

修繕受忍義務とは、賃貸人が賃貸物件の修繕や保存に必要な行為をしようとする際に「賃借人は修繕や保存行為を拒んではならない」というものです。

仮に修繕のために「一時的に部屋を明け渡して欲しい」と求められた場合は、賃借人はこれに応じなければなりません。

もし、これに賃借人が応じずに賃貸借契約の目的を果たせない場合は、賃貸人は賃貸借契約を解除することができます。

逆に賃貸人の保存行為が原因で「賃借人が賃貸借契約の目的を達することが出来ない」場合は、賃借人が賃貸借契約を解除することができます。

 

修繕に関する義務で賃貸トラブルに発展することも!?

賃貸の業務に関わる者の率直な意見として、賃借人の方は「自分たちに何かしらの義務がある」ということを知らないケースは本当に多いです。

そのため、大家さんが修繕のために部屋に入らせて欲しいと言うと「何で入らせないといけないんだよ!」と拒否される方も少なくありません。

大家さんや管理会社のスタッフが勝手に部屋に入って問題になったこともあるので、気持ちが分からないわけでもないですが「頑なに拒むと契約解除に発展する」のでトラブルにならないように気を付けて下さい。

 

 

まとめ

今回は「賃借人の義務について」お伝えしてきましたが、さいごに4つの義務をおさらいしておきましょう。

  • 善管注意義務(保管義務)
  • 用途遵守義務
  • 通知義務
  • 修繕受忍義務

実際には「信頼関係不破壊の法理」があるので、すぐに契約解除や損害賠償請求に発展することはありません。

しかし、発展する可能性もゼロでは無いので賃貸で部屋を借りる際には注意して下さいね。

 



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